若者交流で未来を紡げ 福岡-釜山フォーラム第16回会合
2023/11/27 6:00 (2023/11/27 10:54 更新)
福岡市と韓国・釜山市の都市間交流を新時代へ-。両市による海を越えた超広域経済圏の実現を目指す提言機関「福岡-釜山フォーラム」(議長=石原進・JR九州特別顧問、李棖鎬(イジャンホ)・前BNKフィナンシャルグループ会長)の第16回会合が11日、福岡市西区の九州大伊都キャンパスで開かれた。経済界や大学などから約30人が出席し「若者交流で紡ぐ未来パートナーシップの共創」「経済・民間交流活性化のための基盤構築」をテーマに意見を交わした。参加者は学生やベンチャー企業など若い世代の交流を後押しする重要性などを確かめ合った。 (平山成美、釜山・岩崎さやか、写真は穴井友梨)
持続可能な連携拡大へ 第1セッション
未来に向けた若者交流を巡って討論が交わされた第1セッションでは、福岡、釜山両市の4大学の学長らが登壇。大学間の交流事業や今後求められる人材育成について発表した。
九州大の石橋達朗学長は、教育課程を共同で構成し、連名で学位を授与する「ジョイント・ディグリープログラム」を釜山大と来春創設すること、釜慶(プギョン)大との半導体に関する共同研究などを紹介。大学間だけではなく、産官民との協働で交流を広げることが重要だと主張した。
福岡大の朔啓二郎学長は、人口減少を踏まえた経済や教育、社会を構築する必要性を強調。将来必要な柱の一つに国際化を掲げており、東義大(釜山市)とサッカー、野球の交流試合を実施するなど、海を越えた大学連携の継続に意欲を示した。
釜慶大の張瑛秀(チャンヨンス)総長は、日韓両国の若者が互いの国や文化に関心を持つきっかけが多様になり、親密度や友好度が高くなっていると分析。ただ、一時的な交流にとどまり、持続可能な人材の育成や活用が不足しているとして、両市にある企業などでのインターンシップの機会拡大を呼びかけた。
東西(トンソ)大の張済国(チャンジェグク)総長は、日韓関係は政府レベルでは改善しつつあるが、民間への波及には時間がかかると指摘。その上で、欧州の青年間の相互理解が向上したと評価される留学制度「エラスムス」に倣った日韓の交流プログラム創設、大学学長らを集めたフォーラム開催を提案した。
参加者からは、韓国の若者の日本への就職促進、若年層のニーズを把握した交流の必要性などを訴える意見が出た。
創業支援で相乗効果を 第2セッション
経済や民間交流活性化の基盤構築を議論した第2セッションでは、釜山銀行の方聖彬(パンソンビン)銀行長、西日本シティ銀行の村上英之頭取が登壇。地域発展のための取り組みや地域銀行の役割について発表した。
方氏は、地域の競争力向上のため、釜山銀行が地域通貨の運営や釜山国際映画祭などへの協賛活動で貢献していると報告。村上氏は、気候変動への対応を顧客企業と共に進めるといった持続可能な開発目標(SDGs)に向けた試みを紹介した。
創業支援のサロン開設やファンドを通じた出資など、地域の産業、雇用の創出を目指す事業は両銀行に共通。方氏が「地域との共生や成長に向けた役割には共通点が多い」と呼びかけると、村上氏は「パートナーシップによって目標を達成する精神で、釜山-福岡間の交流活性化に努力したい」と応じた。
両銀行の発表を受け、福岡県弁護士会の大神昌憲会長は、多言語人材が豊富で起業率も高い釜山、人口が増え創業しやすい環境が整いつつある福岡の両市の特徴に言及。「お互いの参考になる」と交流深化に期待した。釜山ベンチャー企業協会の金敬祚(キムギョンジョ)名誉会長は「若い創業者の交流の場を設けることができたら相乗効果が生まれる」と提案した。
釜山市が誘致を目指す2030年の国際博覧会(万博)について、住友商事九州の高橋和之社長は「日本に続いて釜山での開催が実現すれば世界中から関心が集まる」として、日韓海峡経済圏の形成と発展への寄与に期待を込めた。
「広域連携で往来促進を」 日本政府観光局理事長 蒲生篤実氏の基調講演
2023年の訪日外国人客数は2500万人前後になる見通し。中国の団体客が戻らない中、韓国などアジアからのリピーター、東アジア地区を長期間周遊する欧米などの富裕層の存在が大きい。
訪日客が順調に回復する半面、観光客が増え過ぎて弊害をもたらす「オーバーツーリズム」が問題となっており、地方への誘客が求められる。そのため、地域の環境、文化、経済を守り育む「持続可能な観光地」、1人当たり消費額を拡大する「高付加価値旅行」などが鍵になる。
韓国からの訪日客は8月だけで19年比184%、福岡空港からの韓国人入国者も6月は同114%まで回復した。福岡から九州各県に足を延ばすという流れがある。九州で広域連携し、ストーリー性のある観光ルートづくりが重要だ。
一方、日本からの訪韓客はまだ少ない。双方向の往来でなければ友情、友好は育めない。福岡と釜山を窓口に、コロナ禍前よりも交流を拡大できるよう期待している。
経済の好循環創出 議長総括要旨
福岡、釜山両市が未来志向の協力関係を構築するため、共有すべき構想を確認した。
①日韓間の観光客往来増加を歓迎し、両都市においても持続可能な観光の開発などを推進する。
②西日本シティ銀行と釜山銀行がシナジー(相乗)効果を上げながら、地方創生、経済と環境の好循環などの創出を目指す。
③両都市の大学生が互いの地域の企業などでインターンシップを実践する方策に関し、産官学民で検討する価値がある。まず釜山側の提言により、福岡の大学生を釜山に招き、韓国人学生との交流、講義体験、企業訪問と見学の機会を設ける。
参加者名簿
【福岡側】石原進・JR九州特別顧問▽石橋達朗・九州大学長▽大神昌憲・福岡県弁護士会会長▽河野雄一・テレビ西日本社長▽川原正孝・ふくや会長▽木戸啓人・九州電力常務執行役員▽朔啓二郎・福岡大学長▽柴田建哉・西日本新聞社社長▽高橋和之・住友商事九州社長▽谷川浩道・福岡商工会議所会頭▽縄田真澄・九州経済調査協会理事長▽村上英之・西日本シティ銀行頭取▽松原孝俊・九州大名誉教授
【釜山側】李棖鎬(イジャンホ)・前BNKフィナンシャルグループ会長▽具正會(クジョンフェ)・恩城医療財団理事長▽金敬祚(キムギョンジョ)・釜山ベンチャー企業協会名誉会長▽金璡洙(キムジンス)・釜山日報社社長▽朴志允(パクジユン)・三美文化財団理事長▽方聖彬(パンソンビン)・釜山銀行銀行長▽沈相均(シムサンギュン)・釜山経営者総協会会長▽廉正旭(ヨムジョンウク)・釜山地方弁護士会会長▽張瑛秀(チャンヨンス)・釜慶大総長▽張済国(チャンジェグク)・東西大総長▽崔三燮(チェサムソプ)・大沅Plus建設会長
次回は2024年秋
福岡-釜山フォーラムの次回(第17回)会合は2024年秋に韓国・釜山市で開催予定。